床柱の赤松、中柱のこぶし、天井の杉、床框の杉の中杢など、
数寄屋の美ともいえる材は、吉野杉、北山杉、秋田杉など全国から集めた選りすぐりの逸材を使用。
真っ直ぐではない木を壁の塗りにしっくり納め、
柱は丸太の柔らかさを損なわないよう鴨居や敷居に納める。
木・竹・土・草などを自然の有り様に見せつつ、
手が培った勘と経験を頼りに性質を生かし組み上げる技は、長年、素材と向き合ってきたからこそ。
正面は貴人口、右側に躙口と連子窓、床の間には墨蹟窓、点前座の前には風呂先窓を設け上部には吊棚を設置。客座の天井は平天井と掛込天井に分け、杉を薄く剥いだ枌板(へぎいた)を使用。点前座の天井は葦を使って落天井にし下座をあらわしています。このような構成を「真行草の天井」と呼びます。壁は黒基調の京聚楽塗り。
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平天井と掛込天井には目が整った杉の枌板を、壁止めには赤松、竿には女竹と白竹を使用。
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連子窓には石目張りを施した障子を設置。茶室の中では特に目を引く鴨居・敷居は、すっきりと冬目が通った材を厳選し使用しています。
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露地から躙口へ。連子窓の外側は白竹を詰め打ちし、草庵の景趣を付加しています。
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栗の八角化粧ナグリ柱と下地窓が印象的な茶道口。濡れ縁から臨む開放的な世界を逸脱し、静寂へと誘います。下地窓や連子窓が光の濃淡をならし、やわらかく落ち着いた雰囲気をつくりだします。
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玄関の天井は赤杉の柾目。目が通るように長手一枚ものを使用しています。玄関框(かまち)式台は肥赤松、柱は杉の面皮柱を。その場所にふさわしい素材を使用することで、数寄屋ならではの上品な空間に仕上げています。
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モミジの葉をそのまま壁に塗り込むのは至難の技。左官職人の風雅な心持を表しています。
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屋根の中程が盛り上がり、滑らかな曲線を持つ「むくり屋根」と深い土間庇も数寄屋の特徴。謙虚な雰囲気を醸し出し、内部に静謐(せいひつ)をもたらします。むくり屋根は美しさだけではなく、雨に対しての機能も優れています。
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吉井川の豊かな自然を望む「鴨越庵」。
上寺山を望む吉井川の土手沿いに位置する、自社作業場の上に設けた吉井川の茶室「鴨越庵」。
吉井川の「三畳台目」が映し出す趣は、身と心を整え、深遠なる茶の湯の世界へと誘います。
心身が清らかになると了得するのが「一期一会」の心。
あきら建築では、この精神で茶室建築と向き合っています。